独自の甘みと食感で「イカの王様」と呼ばれる高級食材のモイカ(アオリイカ)をたっぷり味わえる「津久見モイカフェスタ」(来年1月15日まで)が、大分県津久見市で始まった。今回で10期目となり、期間中、市内の飲食店11店舗が地元産モイカのオリジナル料理を出す。提供されるモイカは、伝統の「バッタリ漁」でとったものだけ。どんな漁なのか、漁に同行してみた。

 10月28日午前6時過ぎ、豊後水道に突きだした四浦半島にある津久見市・深良津(ふからづ)漁港。「バッタリ協議会」(会員13人)の山尾会長(70)の「恵漁丸(けいりょうまる)」(2トン)に乗り込むと、ほどなく出航した。半島を右手に見ながら、船は波を切って漁場へ急ぐ。冬の訪れが近いだけに海風が冷たい。

 漁場は意外と岸に近い。水深は約15メートル。「どこでも網を入れるが、底に藻場があり、イカのえさになる小魚が多い所が漁場だ」と山尾会長は説明する。

 津久見の海は、石灰質の山からのミネラル豊富な水がリアス式海岸に流れ込み、豊かな藻場が育つ。藻場はイカの産卵場所となり、隠れ場所となって稚イカを育む。モイカは食用のイカの中でも甘みやうまみの元となるアミノ酸が多く含まれ、高値で取引される。

 揺れる船上から慣れた手つきで網を海中に投入しながら船を操り、水面に大きな円を描くように網を張る。この道約50年の技だ。

 漁は船を拠点に網を引く船引き網漁で、網は長さ約100メートル、両端の天地約10メートル、中心部分は約20メートルのいびつな形をしている。網の中心に赤い浮きがついており、中心部は目が細かくなっている。

 この赤い浮きを目印に、山尾会長は船首と船尾を交互に移動しながら丁寧に網を上げていく。黒いすみを吐く十数匹のモイカやカワハギ、タイ、小アジなどが網の中で跳びはねた。

 「バッタリ漁」の名前の由来は、大漁の一方でまったく取れない時もあり、行き当たりばったりの漁ということから、この名があると山尾会長。「漁は東の空が白々と明るくなって2~3時間が勝負。漁期にはほぼ毎日午前中に4、5回は網を入れますが、漁獲は昔ほどではなくなりました。最近は最盛期が遅くなって11月から12月。昨年は11月にさっぱり取れなかった。理由は分かりません」。今年は好調だという。

 水揚げされたイカは港近くの海上のいけすに生きたまま移す。さらに津久見市高洲町の県漁協津久見支店に設置する専用いけすで、えさを与えながら蓄養。店からの注文を受けて生け締めにすることで、常に鮮度を保った最高の状態で出荷できるという。