大阪府の最北端、山に囲まれ、田んぼや畑が広がる能勢(のせ)町。成田さんは、ここで農薬や化学肥料を使わない有機農業を営む。元放送作家で、独立就農して約10年。自然災害の被害を受けるなど苦労もあったが、「毎日がすごく楽しい」と笑顔を見せる。

 フリーの放送作家として、関西のテレビ局でバラエティーや情報番組の制作に関わっていた。ときに昼夜逆転の生活。任せてもらった仕事は多かったが、30歳を過ぎた頃、先行きに不安を感じるようになった。

 まち歩きをする番組のリサーチで各地を回ったとき、出会った農家がみな笑顔だったのが印象に残った。「なんか、農業楽しそうだな」。そこで農業を知ろうと、北海道、山梨県で研修したが、やっぱり関西のノリが合うと感じ、大阪で就農を決意。約8年間続けた放送作家をやめ、2010年春から研修に入ったのが能勢の農家だ。

 この農家で取り組んでいたのが有機農業だった。地域に溶け込もうと、研修中に地元の消防団に入った。研修時代に規則正しい生活をしたことで、100キロあった体重は80キロに減った。12年から本格的に独立した。

目を付けたCSA

 いまは、計約2・5ヘクタールの農地で、季節の野菜や米を栽培。生産した農産物は、有機野菜を扱う卸会社などに出荷している。

 農林水産省によると、日本の有機農業の面積は全体の0・5%(18年)と、まだ、ごく一部にとどまっている。もっと有機農業の魅力を知ってもらうためにできることはないか。まずは、食べてもらって味を知ってもらいたい。

 そこで、消費者との連携を深め、少しでも安い価格で野菜を届けられる仕組みとして目を付けたのが、欧米などで広がっている「CSA(地域支援型農業)」だった。

CSA 

Community Supported Agricultureの略。消費者と生産者が連携し、相互に支え合う仕組み。1980年代半ばにアメリカで始まったとされる。消費者が半年や1年など一定期間の農産物の購入費用を前払いする。農家はそれを種や肥料代などに充てて生産。市場価格に左右されないので生産者の収入が安定し、持続的な経営が可能になる。消費者も顔の見える生産者から質の良い農産物を購入することができる。欧米を中心に普及しているが、日本ではまだ事例は少ない。