2018年10月にコンビニで発売され大ヒットした「悪魔のおにぎり」。ほどよく味のついたご飯に天かすのコクとうまみが加わり、「やみつきになる」味わいだ。発売から1年でシリーズ累計5600万個を売り上げた。

 あのコンビニおにぎりのルーツは、実は南極だった。

 現在は伊藤ハムで商品開発の仕事をしながら、食のイベントなども手がける渡貫さんが、南極行きを志したのは、ある映画がきっかけだった。

 南極のドームふじ基地で隊員8人が越冬する様子を軽妙なタッチで描いた映画「南極料理人」(2009年)。海上保安庁から派遣された調理担当隊員の著作が原作で、レンタルDVDを見た渡貫さんに「こんな非日常空間で、隊員たちのために食事を作りたい」との思いが芽生えた。

 調理師専門学校を卒業後も、子育て中の一時期を除いて調理の仕事に携わってきた渡貫さん。もともと、食べる人の顔が見える環境で、食べる人の反応を見ながら作るのが好きだった。南極・昭和基地で越冬しながら隊員の食事をつくる調理隊員に応募。2015年、3度目で合格した。

 その年の12月に現地へ派遣され、日本料理の渡貫さんとフランス料理専門の調理隊員計2人で1年間、シフトを組んで30人分の食事づくりにあたった。

 食事は、日本で食べているものと変わらないものを出すようにしていた。普段食べているものが食べられないと、ストレスになるためだ。朝はご飯とパン、おかずのビュッフェスタイル。昼は牛丼や天ぷらうどん。夜はご飯に焼き魚に納豆、煮物といった定食。金曜の昼は必ずカレー――といった具合だ。

 ただ、南極ならではの事情もあった。