食材が豊かなタイには、アリの卵を食べる文化がある。アリといっても、よく見るクロアリではなく、胴体が赤いアカアリだ。ツヤツヤした真珠のような卵は、大豆くらいの大きさがある。数ある食材の中で、なぜわざわざアリの卵を食べるのか? そこには、私もかつて苦しんだ、タイのある意外な「病」が関係していた。

 タイで暮らしていると、素揚げにした虫を並べた屋台を見かけることがある。プリッと太った幼虫や茶色いサナギを、こんがり油で揚げたものだ。屋台の電球に照らされた虫たちを眺めていると、いまにも動き出しそうな感じがしてくる。日雇いの作業員たちがスナック感覚でつまんだり、ビールのあてにしていたりする。

 昆虫食はタイだけでなく、東南アジアで広く見られる食文化だが、アカアリの卵を食べると知ったのは今年3月。全く別の虫の取材をしていた時のことだった。