三重県農業研究所(松阪市)が独自に開発したイチゴの新品種「うた乃(の)」の本格栽培が、新年度から県内各地で始まる。収穫は11月末から始まる見込みで、県はブランド化をめざして「あまおう」「紅ほっぺ」など県外発のビッグネームがひしめく都市部の市場にデビューさせる方針だ。

 研究所によると、うた乃は「歌のように広がり愛されるイチゴになるように」との願いを込めて名付けた。2017年に交配した種子から、収穫直前に枯れる「炭疽(たんそ)病」に一定の耐性があるうえ、秋口からの収穫が期待でき、実の形や食味などの品質にも優れた系統を選び出した。

 糖度が高いことから甘めで、実のそろいは良い。果皮は赤く、果肉は淡い赤色。種子で繁殖させるのが特徴で、育苗作業の負担が軽減されるほか、葉や茎が育つ勢いが強いためハウス内の暖房も抑えられるメリットがあるという。収穫期は11月~翌年5月。

 三重県オリジナルのイチゴの品種は、08年に同研究所が開発した「かおり野」以来になる。22年3月に県が品種登録を出願、同年9月に国側が公表した。登録には栽培実績の積み重ねが求められることから、県は23年度末まで2年間の予定で、伊勢市や松阪市などの5軒の農家の協力で試験栽培した。このため、うた乃は県内の一部のスーパーマーケットにはすでに出回っているという。

 県は本格栽培の初年と位置づける24年度に向けて、うた乃の栽培を希望する農家への生産許諾制度を導入し、3月からスタートさせる。これまでに農家向けの説明会を何度か開催し、県全域から計約100人が参加したという。

「多くの方に愛着を持ってもらう仕掛けを」

 こうした動きに、野菜や果物の魅力を生産者と消費者の架け橋として社会に伝える野菜ソムリエたちも反応した。