イタヤカエデの樹液でつくるメープルシロップは山形県尾花沢市細野地区の自慢だった。しかし、販売する機会だった催しはコロナ禍で中止になり売れ残った。困っていたとき、県産のさまざまな食材を使ったクラフトビール醸造家と出会う。思いは結実し、新たな一品が誕生した。
冬は集落への道を雪がふさぐ山あいに細野地区はある。毎年2月下旬ごろ、イタヤカエデの幹にドリルで穴をあける。管を通してメープルサップと呼ばれる樹液がポタポタ落ち、1週間から10日ほどかけて採取。今年は117本から採れた。
「村のかあちゃんたちがサップを煮詰めてシロップにし、瓶詰めにして売ってきた」
地区の70戸でつくる「清流と山菜の里ほその村」会長の五十嵐さんは話す。女性たちの「友輪(ゆうわ)会」が10年以上前からつくるシロップは人気だった。
だが、コロナ禍で販売の機会が減った。悩む五十嵐さんは、訪れた天童市の複合施設「将棋むら天童タワー」の一角にビール製造のタンクがあることに気づいた。「地産地消のようなビールを造ってもらおう」。昨年2月、「Brewlab.108」(ブリューラボ・トウハチ)代表の加藤さんのもとに飛び込み、製造を依頼した。