秋田市の繁華街の一角に3月、珍しい飲食店がオープンした。カウンターだけのこぢんまりとした店で、地元の魚から取っただしで汁物を作り、お酒を提供する、一見落ち着いた居酒屋。だが、なぜか看板には「釣具店」の文字。店主は異色の経歴の持ち主だ。
 秋田市の繁華街・川反(かわばた)。居酒屋やすし屋、郷土料理店が立ち並ぶメイン通りに面するビルのドアを開けると、屋内飲食店街「たばこ座横丁」が広がっている。
 屋内の細い通路に沿って屋台風の小さなバーや酒場が軒を連ねる。60メートルほど進むと、突き当たりに白いしっくいの壁で仕切られた店が見えてきた。店の外には「中居釣具店 川反店」の看板がかかっている。
 5坪ほどの店内に入ると、店主の山田さんが迎える。右手にわずか7席のカウンター席があり、ビールや酎ハイなどを出す。定番メニューはあら汁とおにぎり。漁師にもらったタイや未利用魚を活用し、そのだしを生かす薄味だ。壁にはシャンパンのメニューもかかっている。