ある日、手にしたニュースリリースの写真に、目がとまった。

 ジャガイモを手に真剣な表情をしたスーツ姿の男性の頭には、コロッケを模したかぶり物。どうもコロッケ製造会社の社長のようで、「コロッケ社長」とも書かれていた。内容は、コロッケの歌とダンスを作ったというもの。

 どんな人なんだろう?

 ずっと気になっていて、8月下旬、大阪府豊中市にある「合同食品」を訪れた。

 会社の駐車場に入ると、建物の外側には、コロッケのかぶり物をした人物のイラストがあちこちに描かれていて、それがまず目をひいた。

 会社に入ると、社長の和田さんが穏やかな表情で現れた。名刺交換すると、受け取った名刺がコロッケの形……。いきなり驚かされた。

販売先の一言で広がった世界

 和田社長は大阪府茨木市生まれで、姉が2人いる末っ子の長男。中学、高校時代はソフトテニスで汗を流した。

 「高校生の頃まで自分に自信が持てなくて、引っ込み思案だった」

 大学生になり、「これからはITか環境の時代になる」と考えた。その業界に絞って就職活動をして、卒業後に入社したのがIT関連会社。ソフト開発や営業の仕事をした。

 だが、コロッケ製造会社の社長だった父の病気が悪化し、約20年前に自分が会社を継ごうと決意した。ただ、「食」やコロッケのことがよく分からない。料理教室にも約1年間通い、若い女性らに交じって料理を学んだ。

 社長となった当時、従業員はパートも含めて10人ほど。資金も乏しい。販路の開拓を自ら担いながら、資金繰りといつも戦っていた。