自然災害で被災した農家の作物を、代わりに売ったり加工したりする支援の形が広がっている。昨秋、台風被害に見舞われた千葉県では、市場に出回らない野菜を流通させる取り組みが軌道に乗りつつあり、先駆者たちもエールを送る。

被災作物を販売、農家へ利益

 「チバベジ」。昨年9月の台風15号で被災した千葉県内の農家を支援しようと、野菜や果物を買い取って売ることから始まったプロジェクトの名前だ。

 台風の上陸から3日後の9月12日、同県四街道市の梨農家、稲坂さんを同県佐倉市でゲストハウスを経営する鳥海さんが訪ねた。被害に遭った梨約2トンのうち、暴風で傷ついたり色づきが悪かったりする400キロほどを鳥海さんが買い取ってゲストハウスで販売した。

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 農家を支援するだけでなく、形状などの問題で市場に出回らない野菜や果物を有効に活用できないか――。もともとフードロスに関心が高かった鳥海さんは、この体験をきっかけに地域プランナー安藤さん=千葉市=とともに一般社団法人「野菜がつくる未来のカタチ」を10月に設立。ゲストハウスや、県内や東京都内でのイベントで傷んだ野菜などを販売し、農家へ利益を還元している。

 取り組みに賛同する飲食店は、農家から野菜や果物を買い取ってジャムやソース、ピクルスに加工する。それぞれ40ほどの農家と飲食店が加わり、昨年11月には来日したローマ教皇らの昼食会で、佐倉市のイタリア料理店が被災した農家の野菜を使った料理を提供。JR千葉駅の駅ビル運営会社からの働きかけを受け、今年1月には駅ビル内の商業施設「チバコトラボ」の一角に野菜やピクルスなどを売る店もオープンした。

 大手住宅メーカーの三井ホーム千葉支店も、県内の四つの住宅展示場でチバベジから買った野菜を来場者にプレゼントし取り組みを紹介している。

 チバベジの活動を通じて、SDGs(エスディージーズ、持続可能な開発目標)を消費者が体感する試みも始まっている。

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 鳥海さんのゲストハウスでは昨年12月上旬、宿泊客が食事作りのワークショップに参加した。昼食の豚汁やピクルスづくり体験、夕食の鍋――。野菜はゲストハウスで販売するために並べているものから、参加者が選んだ。

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 研修で講師を務めた「チバベジ」メンバーの高梨美佳さんは「今日はコップや食器を持参してもらったことで、紙コップを買わずに済んだ。みなさんはSDGsの第一歩を踏み出したといえる」と呼びかけた。参加したシステムエンジニアの小野さんは「フードロスに対して、どうすればいいのかが理解できた」と話した。

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 チバベジは今後、農業体験や新規就農の支援などにも活動を広げていくという。