高野山の中心、金剛峯寺の近くに2022年夏にオープンした「カフェ雫(しずく)」。ここの看板のランチメニューが「高野山精進カレー」だ。

 精進料理では、肉や魚など動物性の食材は、命を大切にする仏教の教えに反するため、禁忌とされる。

 また、植物の中でも、一般的にニンニク、ネギ、ニラ、タマネギ、ラッキョウを指す五葷(ごくん)と呼ばれる野菜も使ってはいけない。これらは臭いがきついうえに「精のつく野菜」とされ、仏道修行の妨げになるとされる。カレー粉などのスパイスも同様の扱いを受けることが多い。

 日本の一般的なカレーは、カレー粉やタマネギ、肉が主な材料とされるが「精進」を名乗るからにはこの三つの材料すべてが使えない。

 では、まったく相いれない「精進」と「カレー」をどのように両立させているのか。

 高野山精進カレーを口にしてみると、カレーそのものの食味を驚くほど再現していた。

 カレー粉の代役として、辛みを演出するのは、高野山のふもとでとれるサンショウ。タマネギの代わりに、やはり山麓(さんろく)の九度山町などで栽培されている富有柿をふんだんに使う。大豆ミートが、そぼろ肉のような食感をうまく引き出している。