深刻化する卵不足の影響は飲食、食品業界に幅広く及ぶ。コロナ禍からの経済回復で需要が戻りつつある矢先に、看板商品の販売を制限せざるを得ない現場では悲鳴の声があがっている。代替品が見つけづらい食品だけに、影響の大きさは「原材料高を超える」との見方も出ている。
「春休みやゴールデンウィークを迎えて福岡に来る人も増えるのに、需要に100%応えられない。かなり痛い」。福岡土産の菓子「博多通りもん」を手がける明月堂(福岡市)の社長はこう嘆く。
訪日客需要の回復や政府の旅行支援で売上高がコロナ禍前の水準に戻った矢先、福岡市など通常の販売地域を除いて出荷を絞っている。今月10日からはネット通販も休止した。「利益を圧縮してでもお客さまの需要に応えたいが、卵が入ってこないことにはどうしようもない」
崎陽軒(横浜市)もチャーハン用の卵を確保しきれず、2日から駅弁でも定番の「炒飯(チャーハン)弁当」の販売を見合わせた。「横濱チャーハン」や「シウマイ炒飯弁当」では、いり卵の量を通常の3分の1に減らし、長ネギとチャーシューの量を増やしている。石屋製菓(札幌市)も「白い恋人」の製造を一時半減させたほか、インターネット経由の販売は今も止めたままだ。
多くの商品に卵を使う洋菓子メーカーのモロゾフ(神戸市)では、足元で必要とする量の約6割しか確保できていないという。小容量のカスタードプリンやレアチーズケーキの販売を2月から休止し、焼き菓子の商品数も減らしている。山口社長は、16日の記者会見で「原材料高や(自社の)値上げ以上に大きな経営インパクトだ」と語った。